待遇は働きや貢献に応じた待遇を!

 

 

 

  • パートタイム労働者の方の働き方をみると、繁忙期に一時的に働く方から通常の労働者と同様の仕事に従事し長期間働く方までその働き方はさまざまです。

 

 

  • このためパートタイム労働法では、事業主はパートタイム労働者の待遇を通常の労働者との働き方の違いに応じて均衡(バランス)を図るための措置を講じるよう規定されています。

 

 

  • 具体的には、職務の内容(業務の内容と責任の程度)、人材活用の仕組みや運用など、契約期間の3つの要件が通常の労働者と同じかどうかにより、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇の取扱いについて規定されています。

 

  

(1) 賃金の決定方法<改正法第9条>

 

「基本給」、「賞与」、「役付手当」など職務の内容に密接に関連する賃金について、次のような対応が求められます。

 

 

通常の労働者との均衡を考慮し、パートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経験などを勘案して賃金を決定することが努力義務となっています。<法第9条第1項>

 

 

 

パートタイム労働者の賃金を客観的な基準に基づかない事業主の主観や、「パートタイム労働者は一律○○円」といったパートタイム労働者だからという理由で一律に決定するのではなく、職務の内容や能力のレベルに応じて段階的に設定するなど、働きや貢献に応じて決定することが努力義務の内容となります。

 

 

 

具体的には、職務の複雑度・困難度や権限・責任に応じた賃金設定や、昇給・昇格制度や人事考課制度の整備、職務手当、役職手当、成果手当の支給など各事業所の実情にあった対応が求められます。

 

 

・・さらに、職務の内容、人材活用の仕組みや運用が通常の労働者と同じ場合は

 

 

通常の労働者と比較して、パートタイム労働者の職務の内容と一定期間の人材活用の仕組みや運用などが同じ場合、その期間について、賃金を通常の労働者と同一の方法で決定することが努力義務となっています。<法第9条第2項>

 

 

 

これは、通常の労働者とパートタイム労働者とで職務の内容と人材活用の仕組みや運用などが同じであれば、単位当たりの仕事の対価は同じであるという理念を表したものであり、同一の賃金決定方法にすることにより、両者を同じ職能や職務といった「モノサシ」で評価することが可能になるというものです。

 

 

 

具体的には、通常の労働者とパートタイム労働者の職務の内容と人材活用の仕組みや運用などが同じ期間については、同じ賃金表を適用することや、両者の賃金の支給基準や査定や考課の基準を合わせることなど各事業所の実情にあった対応が求められます。

 

 

 

実際にどのような方法でパートタイム労働者の賃金を決定するかは事業所の判断にゆだねられていますが、パートタイム労働者はパートタイム労働法第13条の規定に基づき、雇い入れ後、事業主にどのような考え方で賃金を決定したのか、説明を求めることができますので、説明を求められた際に合理的な説明ができるような決定方法にすることが求められます。

 

 

 

なお、パートタイム労働指針では、事業主は、職務の内容に密接に関連しない賃金、例えば退職手当や通勤手当などについても、パートタイム労働者の就業の実態や通常の労働者との均衡などを考慮して定めるよう努めるものとする、としています。

 

 

(2) 教育訓練<法第10条>

 

 

パートタイム労働者と通常の労働者の職務の内容が同じ場合、その職務を遂行するに当たって必要な知識や技術を身につけるために通常の労働者に実施している教育訓練については、パートタイム労働者が既に必要な能力を身につけている場合を除き、事業主はパートタイム労働者に対しても通常の労働者と同様に実施することが義務付けられています。<法第10条第1項>

 

 

上記の訓練以外の訓練、例えば、キャリアアップのための訓練などについては、職務の内容の違い如何にかかわらず、事業主はパートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力及び経験などに応じ実施することが努力義務となっています。<法第10条第2項>

 

 

(3) 福利厚生施設 (「給食施設」、「休憩室」、「更衣室」) <法第11条>

 

 

「給食施設」、「休憩室」、「更衣室」について、事業主はパートタイム労働者に利用の機会を提供するよう配慮することが義務付けられています。

 

 

 

なお、パートタイム労働指針では、事業主は、上記の福利厚生施設以外の福利厚生についても、パートタイム労働者の就業の実態や通常の労働者との均衡などを考慮した取扱いをするよう努めるものとする、としています。

 

 

(4) 差別的取扱いの禁止<法第8条>

 

 

「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」の待遇を差別的に取り扱うことは禁止されています。

 

 

 

「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」の、賃金、教育訓練、福利厚生をはじめすべての待遇を、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されています。

 

 

 

「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」とは、次の要件を満たすパートタイム労働者です。

1

職務の内容が同じ

2

人材活用の仕組みや運用などが全雇用期間を通じて同じ

 

パートタイム労働者が通常の労働者と職務が同一になってから、退職までの期間において、事業所の人事システムや慣行から判断して同じ、となる場合です。

3

契約期間が実質的に無期契約

 

a)

期間の定めのない労働契約を結んでいる場合 と

 

b)

期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当とされる場合です。

 

 

「職務の内容」とは、
 実際に従事している業務と、その業務に伴う責任の程度まで含めて考えますので、「パートタイム労働者と通常の労働者の職務の内容が同じかどうか?」を判断する際には、パートタイム労働者と通常の労働者について、それぞれの中核的業務(◆その労働者に与えられた職務に不可欠な業務、◆業務の成果が事業所の業績や評価に大きな影響を与える業務、◆労働者の職務全体に占める時間、頻度において、割合が大きい業務)を取り出し、中核的業務について、「実質的に同じかどうか?」を判断します。

※個々の作業が一致しているかをみるのではなく、当該職務に必要な知識や技術の水準などの観点から、その業務の性質や範囲の同一性を比較します。

 責任の程度については、◆与えられている権限の範囲、◆業務の成果について求められている役割、◆トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度、◆ノルマなどの成果への期待度などを総合的に比較し、著しく異ならないかを判断します。

 

 

「人材活用の仕組みや運用など」 とは、
 人事異動の有無や範囲 を指します。
  「パートタイム労働者と通常の労働者の人材活用の仕組みや運用などが同じかどうか?」を判断する際には、パートタイム労働者と通常の労働者について、実際に配置転換や昇進したかどうか、だけでなく、将来にわたって配置転換や昇進をする見込みがあるかどうか、について、事業所の就業規則や慣行などをもとに判断します。
  配置転換や昇進をする場合は、「配置転換の範囲も同じかどうか?」を比較します。どちらも配置転換があっても、一方は全国転勤、一方はエリア限定の転勤、という場合は、転勤の範囲が異なるため、「人材活用の仕組みや運用などは異なる」と判断します。
 なお、配置転換や昇進というかたちをとらない場合でも、1つの事業所に雇われている間に経験する職務経験の範囲がパートタイム労働者と通常の労働者との間で異なっていれば、両者の「人材活用の仕組みや運用などは異なる」と判断します。

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