Aさんは仕事中に脳出血で倒れ、復職はしたものの前と同じようには働くことが出来ずに退職しました。ハローワークへ初めていらした時は急に障害者となったショックが抜けず、表情も悲観的だったので、最初は親身に話を聞くことに努めました。
 やがて何度か相談するうち本人も落ち着きを取り戻し、ハローワークとの信頼関係も生まれ、具体的に再就職について検討を始めました。
 以前、やはりAさんと同じように中途障害者となった方が、ハローワークの紹介で人事担当として採用されている企業にお話を繋いだところ、会ってもらえることになり、職員が同行しての面接が実現しました。
  Aさんの健康状態や体力のことを考えて、3ヶ月のトライアル雇用期間中は短時間勤務とし、トライアル雇用での採用となりました。
  その後常用雇用に移行し、就業時間も通常勤務となって元気に働いています。就職後の定着訪問について、就職先の会社の管轄所と連携を図ることもハローワークならではのサービスです。
  相談を受けた担当がご本人の適性について検討し、求人は出されていなかったものの、ハローワークから会社への積極的な働きかけにより成功したケースです。


 A社では地方の支社で障害者雇用を始める際、民間の紹介会社からの求職者に内定を決めたものの、本人から辞退されてしまいました。その会社からはその後紹介が無いため、元々本社の採用でつながりのあった地元のハローワークに来所されました。
 都道府県の枠を超えたネットワークにより、就業場所周辺のハローワークから紹介を受けられることを説明し、早速求人を受理後、その内容を他県にある就労場所の近隣所へ連絡しました。
 また、就業場所に比較的近い都内のハローワークの情報提供で、求職者情報一覧表から求職者リクエストが出来ることを知ったA社担当者は、ハローワークの勧めもあって、早速他県のハローワークに依頼しました。
 その求職者リクエストの結果3名の応募があり、面接選考の結果、最終的に2名の採用が決定しました。なんとハローワークに求人を提出してから採用決定まで10日程度という短期間での良い結果です。
 今回採用となったうちの1名は、職員が求職者に「向いている仕事だ」とアドバイスしたことで応募を決めたそうです。また、ハローワーク毎に求職者リクエストがあるというサービスを知ったことから、積極的に他県のハローワークを訪ねることが出来、ハローワークの充実したサービスを案内できた結果といえます。


 企業側から、経理再編のため人材を募集しているという話がありました。早速ミニ就職面接会を実施し、応募7人のうち3人を採用することができ、ここでハローワークへの信頼を得ることが出来ました。
 その後障害者の職業相談部門と就労支援機関で訪問し、精神障害の特性や配慮、就労について説明をしたところご理解いただき、清掃の仕事の可能性についてお話がありました。早速ハローワークと連携機関とで現地を2箇所見学し、仕事の切り出し等を検討。精神障害者小規模授産所と連携して候補者を選出し、ケース会議や履歴書添削、面接を行う一方、企業側へもハローワークと支援機関の連携した就職後のサポート体制をアピーの練習ルしました。
  その結果、清掃業務で午前一ヶ所、移動して午後もう一ヶ所ということでの採用が内定しました。二ヶ所の一方を支援機関が、もう一方を作業所スタッフがサポートできる地理的な利もあって、企業側が安心できる就職後の支援体制を整えることができました。


 A校の職員は教職員や研究者、少数の事務職員で構成されています。環境がバリアフリーではないことや、知的障害者を雇用出来そうな職域は外部委託しているといった事情から、障害者雇用がなかなか進みませんでした。
 現在有る職域で雇用が難しいのであれば、新たな職域として職員の福利厚生・健康管理の一環としてヘルスキーパー採用を検討してみてはどうかと、ハローワークから具体的な提案をしたことをきっかけに、障害者雇用に向け積極的に取り組むこととなりました。
 ハローワークの紹介で、実際にヘルスキーパーを採用している企業、国立身体障害者リハビリテーションセンターの理療指導室、近隣の盲学校を訪問し、ヘルスキーパー導入に係る相談・助言を受けるなど、視覚障害者に関する知識の向上に努め、やがて本格的に理事会で了承が得られました。
  ハローワークを経由して複数県の盲学校等に照会、求人活動を積極的に実施して、盲学校在学中の視覚障害者を採用する事ができました。実施のためには施設の新設が必要であり、設置にあたっては、国の助成制度である作業施設設置に係る助成金を利用しました。
  開設後は学内の評判も良く、稼働率は100%を超える日が出るほどです。ヘルスキーパー本人と企業とも良い関係であり、長期の定着が望めそうです。


  ハローワークが事業所を訪問した際、会社閉鎖の情報を聞きました。その企業では知的障害者が働いていますが、関係会社への転籍等を斡旋することが難しいということでした。
 早速改めて担当職員が事業所を訪ね、知的障害者との面談を行い、彼らの適性や就労の希望、更に就労に向けて配慮する点などを把握しました。
  並行して受け入れ企業の開拓にあたり、障害者の募集実績がある企業や、面識のある企業にアプローチし、合計3社の企業から面接OKの回答を得ることが出来ました。
  企業の会議室でミニ就職面接会を開催しましたが、当日は求職者と面識のある職員も同行できて、本人も緊張することもなく無事終了。後日2名とも採用されました。
  情報をいち早く入手して動いたことにより、事業所閉鎖前に求職者の働きぶりや人柄などを詳しく相手企業にアピールでき、十分な事前説明が可能だったことが成功につながりました。ハローワークのもつ雇用指導と職業相談の二つの機能の連携により、失業することなく再就職に結びつけることができました。


  会社から「事務職の欠員が生じたことを契機に、欠員を障害者雇用により充足したい。なお、本社で障害者を雇用するのは初めてであり、不安もある」旨の相談がありました。
  トライアル雇用求人として受理後、相談窓口と同時並行して管内の就労支援センターにもこの求人について連絡し、適任者の情報をお願いしたところ、Aさんが支援センター職員と同行して来所されました。
  ハローワーク職員がAさんと面談の上、会社に対し障害の程度等について説明するとともに、
 (1) 文字等はペンを口でくわえて書くことができる
 (2) 自分ができることとできないことのはっきりとした意思表示ができる
 (3) 会社はAさんの自宅から約30分程度である
 (4) トイレ介助を要するが時間を決めて家族等が会社に来て介助することは可能であること等も併せて説明し、面接を受けることになりました。
  会社の担当者も熱意のある人で、面接の結果、トライアル雇用での採用に至りました。やがてトライアル雇用期間の終了が近くなり、会社でAさんの常用移行への検討が始まりました。ハローワークの職員が訪問し、会社の取締役、担当者に対し、パート社員での雇用の可能性について検討していただくよう依頼するとともに、Aさんに対する仕事の進め方の指導についてはジョブコーチ制度の利用を提案しました。
  その結果、週20時間のパート社員(契約社員)として雇用されることとなりました。



 Aさんは、9社に応募し、全て書類選考で不採用になってしまいました。転職経験はあるものの、履歴書・職務経歴書等の作成に不慣れなAさんは、まだ障害者手帳を取得したばかりで、自分の障害を伝えることにも慣れていないということに原因があったようです。ハローワークのアドバイスを受け、企業の書類選考に応募するために、今度は履歴書の添削を受けました。
  2週間後に書類選考を見事通過し、内定をいただいたと笑顔で報告に見えました。「アドバイスのお陰で面接でも障害のことをしっかり伝えることができた。やみくもに応募していたが、履歴書等の書き方が採用に左右すると教えていただき、指導もしてくれて有難かった」との言葉をいただいています。
  応募書類の作成や面接についての具体的なアドバイスで、成功したケースです。


 ハローワークというとどうしても地域性が強く、その地域以外ではなかなかフォローが出来にくいのではないかという印象がありますが、実は、広い範囲に関わることができるのです。
  A社の求人情報に応募を決めたBさんは重度の聴覚障害のある方でした。初めて障害者を雇用するA社は、勿論手話の出来る社員もいなかったので、コミュニケーションがとれないのではと、随分不安に思っていました。 そこで相談を受けた都内ハローワークでは、ジョブコーチ制度や実習等、支援を受けながら雇用に移行できる説明をし、栃木障害者職業センターに依頼し、手話が出来るジョブコーチを担当にするなど配慮を行った結果、実習から開始することが出来ました。  Bさんの相談を行なってきた埼玉県のハローワーク職員から障害特性、就労上の配慮事項について情報提供があり、また、現場確認にはA社への職業紹介を行った茨城県のハローワーク職員も同行・アドバイスし、その連携は後の支援に活かすことができています。 このように1都3県にまたがるような場合でも、全国にあるハローワークのネットワークを活用し、更にその地域の関係機関との連携により就職を成功に結びつけることが出来ました。



 知的障害者や精神障害者は、仕事の能力が十分あっても面接の際、緊張で『普段の自分』を表現できずに、面接だけではなかなか採用まで至らないことも多いのが現状です。
  一方、企業側では雇用ノウハウが不足しているので、知的、精神障害者の雇用を真剣に検討するまで至らないことも決して少なくありません。
  このことから、知的、精神障害者本人を理解してもらうこと、また、企業の雇用不安を解消することを目的として、就労支援機関を付記するなど内容を工夫した、障害者を対象とした障害者求職一覧を作成しています。各就労支援担当者から情報を得た「アピールポイント」「必要な配慮等」を具体的に掲載し、企業を訪問した際に個別のマッチングなどに利用しています。
  また、面接や就労の際、支援担当者が企業へ同行してサポートすることも、企業の雇用不安の解消に一役買っています。



※ 用語解説
【身体障害者(重度)】 身体障害者障害程度等級の1級又は2級の障害を有する者及び3級の障害を2つ以上重複して有する者を「重度身体障害者」としています。
【ジョブコーチ支援】 知的障害者、精神障害者等の職場適応を容易にするため、職場にジョブコーチ(職場適応援助者)を派遣し、きめ細かな人的支援を行う。
【トライアル雇用事業】 障害者に関する知識や雇用経験がない事業所に3ヶ月間トライアル雇用という形で受け入れていただき、障害者雇用に取り組むきっかけづくりを進める事業。
【ヘルスキーパー】 「企業内理療師」のこと。職場において社員にマッサージ・鍼灸・運動療法などを行う理療の専門職の事。あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師の資格を有する視覚障害者のスタッフ。

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