厚生労働省
東京労働局発表 平成22年7月12日 |
担 当 |
東京労働局労働基準部 監督課長 松田 明 監察監督官 宮崎 正行 電話 03(3512)1612(内線6410) |
死亡災害の大幅増加を受けて建設工事現場に一斉監督を実施
○ 東京労働局管内では、平成22年に入って、建設業における死亡災害が、大幅に増加していることから、建設工事現場を一斉に臨検し、監督指導を実施した。
○ 監督実施331現場のうち53.5%に労働安全衛生法違反が認められ、改善を指導した。
○ 特に、足場や高所の作業床等からの墜落・転落防止に関する法違反が多く認められた。
1 一斉監督指導の実施
東京労働局(局長 東 明洋)管内では、平成22年に入って、建設業における死亡災害が14件(同年5月31日現在)発生し、前年同期比8件増と大幅に増加している。
この増加傾向に歯止めをかけるため、管下18労働基準監督署・支署において、次のとおり、東京都内の建設現場に対して、一斉に臨検し、監督指導を実施した。
対象 都内の建設工事現場 331現場
期間 平成22年6月7日から6月18日
2 監督指導実施結果
一斉監督指導の結果は以下のとおりである。
(1) 違反状況
表1 建設現場違反状況
合 計 | 現場別内訳 | ||||
建築 | 土木 | 解体 | その他 | ||
現 場 数 | 331 | 295 | 4 | 4 | 28 |
法令違反現場数 (違反率) |
177 (53.5%) |
163 (55.3%) |
1 (25.0%) |
3 (75.0%) |
10 (35.7%) |
作業停止等命令現場数 (法令違反現場数に対する割合) |
32 (18.1%) |
29 (17.8%) |
0 ― |
1 (33.3%) |
2 (20.0%) |
ア 331現場の53.5%に労働安全衛生法違反
監督指導を実施した331現場のうち、何らかの労働安全衛生法違反(以下「法令違反」という。)が認められた現場は177現場(53.5%)であった。
主な違反事項として、
足場や高所の作業床等からの墜落・転落防止に関する違反が99現場
元請事業者の安全衛生管理面に関する違反(注1)が72現場
で認められた(表2)。
なお、足場の作業床からの墜落・転落災害防止に関する違反現場のうち、13現場においては、そもそも足場等に手すり等の墜落防止措置が講じられておらず、また、29現場においては、平成21年6月1日の労働安全衛生規則改正により新たに義務づけされた従来の手すりに加えた中さん又は下さん等の手すり等が設置されていなかった。
(注1)
「元請事業者の安全衛生管理面に関する違反」とは、たとえば、元請事業者と下請事業者との連絡調整等を行うための協議組織を設置していなかったり、元請事業者が下請事業者の法違反防止の指導を怠ったことが挙げられる。
イ 32現場に対して作業停止等の命令書を交付
法令違反が認められた現場のうち、設備等が安全に関する基準に満たず、労働災害を未然に防止する必要があると認められた32現場(法令違反が認められた現場の18.1%)に対しては、作業停止又は立入禁止を命令する行政処分を行った(表1)。
(2) リスクアセスメント等の取組状況
今回監督指導を実施した建設現場におけるリスクアセスメント等の取組状況は、
実施している現場 257現場(77.6%)
実施していない現場 74現場(22.4%)
であった。
(注)
リスクアセスメント等とは、以下の手順で実施する労働災害防止対策であり、危険の度合(リスク)に応じて、事前にリスクを除去・低減する計画を立てて対策を実施するため、死亡災害、重大災害防止に有効な仕組みであり、当局においては、その導入を推進している。
(リスクアセスメント等の仕組み概要)
現場において事前に危険な箇所や作業の洗い出しを行う。
各危険箇所等について、危険の度合い(リスク)を見積もり、措置を講ずる優先度を決定する。
優先度に応じたリスクの除去・低減措置を検討し、措置を講じた後のリスクを評価する。
改善計画を策定し、計画に基づく措置を実施する。
講じた措置の有効性・効果を確認するとともに、残ったリスクを明確にする((1)に戻る。)。
3 今後の方針
東京労働局の第11次労働災害防止計画(平成20年度~24年度)においては、建設業を重点業種と位置づけており、特に当該業種における「墜落・転落」による労働災害の防止を最重点課題としている。
前述のとおり、平成22年における建設業の労働災害が増加傾向にあり、また、今回の一斉監督指導においても、労働災害防止対策が徹底されていない現場が少なからず認められた。
建設工事現場に対する監督指導をさらに強化するとともに、死亡・重大災害防止に有効なリスクアセスメント等の導入についても積極的に指導を行う方針である。
また、法令違反を繰り返す事業者や法令違反を原因とする死亡・重大災害を発生させた事業者、さらには、労働災害を隠すなど悪質な事業者については、司法処分を行うなど厳正な対応を行うこととしている。
違反事項 | 違反現場数 (違反率) |
主な内容 |
【墜落・転落防止】 足場や高所の作業床等からの墜落・転落防止関係 |
99 (22.9%) うち足場に手すり等の措置がなかった現場数 ・・・13 うち下さん・中さんがなかった現場数 ・・・29 |
・高所(2m以上)作業における安全帯不使用(安衛則518(2)、519(2)) ・高所の作業床の端、開口部に手すり等無し(安衛則519(1)、653) ・高所作業箇所で安全帯取付け設備無し(安衛則521) ・足場の作業床未設置、手すり等無し(安衛則563、655) |
【安全衛生管理面】 元請事業者における各種管理者等の選任、管理事項関係 |
72 (21.8%) |
元方事業者の講ずべき措置未実施(安衛法29,29の2) 特定元方事業者の講ずべき措置未実施(安衛法30) |
【型枠支保工】 型枠支保工の倒壊防止等関係 |
16 (4.8%) |
・型枠支保工の組立図未作成、組立図どおり作成されていない(安衛則240) ・型枠支保工のパイプサポートの不適(安衛則242) ・型枠支保工の組立て時の立ち入り禁止無し(安衛則245) |
【クレーン等】 クレーン作業における危険の防止関係 |
5 (1.5%) |
・クレーンの作業開始前点検未実施(クレーン則36) ・移動式クレーンの使用制限無し(クレーン則64) ・移動式クレーンの作業方法の決定無し(クレーン則66の2) ・移動式クレーンに係る立入禁止未実施(クレーン則74) ・クレーンの合図の統一未実施(安衛則639) |
・〔参考〕