東京労働局(局長 東 明洋)は、平成20年度の司法事件処理(管下18の労働基準監督署(支署)及び東京労働局特別司法班が労働基準法、労働安全衛生法等の違反被疑事件として検察庁へ送検したもの)の概要を以下のとおり取りまとめた。
1 概 要 |
(1) |
平成20年度の送検件数は76件で、19年度の75件を1件上回る結果となった。
違反内容別では、労働条件に関する送検事案が36件(47%)、安全衛生に関する送検事案が40件(53%)となっている。(別表1参照)
死亡災害等の災害調査を端緒とする事件の送検件数については、平成20年度は26件で、前年度より4件減少したが、長期的に見るとほぼ横ばいである。 |
(2) |
違反内容別では、労働安全衛生法違反40件(52.6%)、労働基準法違反34件(44.7%)、最低賃金法違反2件(2.6%)であった。
労働基準法違反・最低賃金法違反合計36件のうち、賃金不払が20件、時間外割増賃金不払が6件であった。
労働安全衛生法違反40件のうち、危険防止等措置義務違反について27件、労働災害を発生させたのに労働基準監督署に報告しない、いわゆる「労災かくし」事件が10件であった。
この10件の「労災かくし」事件のうち業種別では、建設業が8件、食料品製造業、ハイヤー・タクシー業が各1件であった。
なお、この10件は前年度の2倍の件数であり、平成14年度以降で最も多い状況となっている。(別表2の(1)参照)
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(3) |
業種別では、建設業が30件(39.5%)と最も多く、次いで、製造業12件(15.8%)、商業7件(9.2%)、教育・研究業6件(7.9%)運輸交通業5件(6.6%)、接客娯楽業5件(6.6%)となっている。(別表2の(2)参照) |
(4) |
事件の端緒別では、労働災害を端緒としたものと、告訴・告発にかかるものが、それぞれ26件(34.2%)である。
労働災害を端緒とした事件26件のうち、事故の型別では墜落転落災害によるものが18件(69.2%)と最も多く、そのうち業種別では建設業が14件(77.8%)と大部分を占めている。
告訴・告発事件26件のうち、賃金不払が14件と最も多く、次いで時間外割増賃金不払が5件、雇入れ通知書交付なしが3件となっている。
労働基準監督署による監督や労働者からの申告情報等を端緒とする送検事案は24件(32%)で、これらは再三の行政指導にも従わなかった事案や事案の悪質性から即時に司法処分としたものである。(別表2の(3)参照)
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2 送検事案にみる特徴 |
(1) |
依然として、労働災害の原因となる重大な「危険防止措置義務違反」の送検が多数認められる。特に、労働安全衛生法違反事件として送検した40件中墜落転落災害による事件が18件と、安全衛生法違反被疑事件の45%を占め、また、全送検件数に対しても24%を占めている。
さらに、墜落転落災害による事件のうち建設業の占める割合は78%と、建設業における在来型の労働災害が減少していないことを示している。
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(2) |
近年、40%を占めていた告訴・告発事件は、平成20年度は19年度に引き続き減少しているものの、それでも34%を占めている。 |
(3) |
「労災かくし」事件については、同一事業場での複数の「労災かくし」事案で送検したもの、不法就労者に関する「労災かくし事案」で送検したものがみられる。 |
3 平成21年度の方針 |
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東京労働局は、従来にも増して労働基準関係法令の履行確保を図るため、労働基準法等の労働関係法違反に対しては厳正な態度で臨むこととしており、特に重大・悪質な事案に対してはこれを放置することなく積極的に司法処分を行う方針である。 |