別添 |
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東京労働局では、平成18年中に東京労働局管下の18労働基準監督署(支署)へ届出のあった「企画業務型裁量労働制に関する決議届」493件のうち集計可能な480件(以下「集計対象」という。)の内容について、以下のとおりにとりまとめました。 |
1 対象労働者数・・・2万人を超える 「対象労働者数」は、平成12年の制度開始以来着実に増加しています。特に、平成16年の法改正により1万人台となり、平成18年は前年より約3千人増の22,540人で初めて2万人を超えました。 |
2 対象事業場の属性・・・本社・本店が過半数 集計対象の480件について「事業場の属性」をみてみますと、本社・本店である事業場が258件(53.8%)、事業本部である事業場39件(8.1%)、地域本社や地域を統轄する支店・支社等である事業場が22件(4.6%)、工場等である事業場が14件(2.9%)、支社・支店等である事業場が134件(28.1%)となっています(図表第1参照)。 なお、企画業務型裁量労働制を実施することができる事業場は、従来「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」で原則本社・本店に限るとされていましたが、平成16年1月からの法律改正により、「事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査 及び分析の業務が存在すると考えられる事業場」においても企画業務型裁量労働制の導入ができるようになり、現在では、以下のとおりとなっています(企画裁量指針第2の1の(1))。
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3 業種構成・・・損害保険業が第1位 図表第2は、集計対象の480件を業種別にとりまとめたものです。 これによると、損害保険業117件(24.4%)・生命保険業36件(7.5%)等の金融・広告業の計が200件(41.7%)と占める割合が高くなっており、続いて、製造業113件(23.5%)となっています。 また、企画業務型裁量労働制の施行当初から導入が多かったIT関連(コンピュータや周辺機器等)の製造業54件(11.3%)、ソフトウェア業46件(9.6%)等のIT関連の業種も依然と高い割合を占めています。 なお、今回のとりまとめでは、便宜上、本社・本店及び持株会社等の業種について、その企業・団体等の本業とする業種に分類しております。 |
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図表第2 「企画業務型裁量労働制に関する決議届」の届出事業場の業種構成
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4 労使委員会の委員数・・・6名が最多 図表第3は、集計対象の480件について労使委員会の委員の数をとりまとめたものです。 労使委員会の委員数については、集計対象の480件の単純平均で6.6人となっており、労使委員会の委員を6人とする届出が173件(36.0%)と最も多くなっていました。 また、委員数が最少なのは3名で、最多は36名となっていました。 なお、労使委員会の委員数は、行政通達(平12.1.1基発第1号)により、「(略)二名で構成する委員会については法第38条の4第1項に規定する労使委員会とは認められないものであること。」とされておりますが、問題のある労使委員会による決議は適法な労使委員会によるものでないので、企画業務型裁量制としての労働基準法上の効果が認められないと考えられます。 |
5 労使委員会の労使の比率・・・労働者側委員が半数以上の事業場は98.3% 図表第4は、集計対象の480件について、労使委員会の(全)委員中に占める「労働者を代表する者に任期を定めて指名されている委員(以下「労働者側委員」という。)」の数の比率(労働者側委員数/(全)委員数)をとりまとめたものです。 今回のとりまとめによりますと、労使委員会の委員の半数が労働者側委員である届出が366件(76.3%)となっており、労働者側委員が半数を超える事業場を含めると472件(98.3%)と大半を占めています。 なお、労使委員会の委員の半数は労働者側委員であること(労基法第38条の4第2項第1号)となっています。 また、労働者側委員は、管理又は監督の地位にある者以外の者について行わなければならず(則第24条の2の4第1項)、過半数代表者についても次のいずれにも該当することが必要となっています。(則第6条の2第1項、平11・1・29基発45号)
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6 対象労働者の全労働者に占める割合・・・20%以下の事業場で過半数 図表第5は、集計対象の480件について、対象労働者の割合(対象労働者数 / 常時使用する労働者数)をとりまとめたものです。 これによると、対象労働者の割合を10%以下とする届出が188件(39.2%)、同10%を超えて20%とする届出が132件(27.5%)となっています。 反面、常時使用する労働者の全員を裁量労働制の対象とする届出4件(0.8%)をはじめとして、常時使用する労働者の半数以上を裁量労働制の対象とする届出が23件(4.8%)となっていました。 なお、企画業務型裁量労働制の対象業務が「事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査及び分析の業務」(法第38条の4第1項第1号)であり、「事業の運営に関する事項」が「対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼす事項又は当該事業場に係る事業の運営に影響を及ぼす独自の事業計画や営業計画をいい、対象事業場における事業の実施に関する事項が直ちにこれに該当するものでないこと」(企画裁量指針第3の1の(1)のイ)とされていること、さらに、対象労働者の範囲が「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」(法第38条の4第1項第2号)であり、「対象労働者は、当該対象業務に常態として従事していることが原則であること。」(企画裁量指針第3の2の(1))として、「例えば、大学の学部を卒業した労働者であって全く職務経験がないものは、客観的にみて対象労働者に該当し得ず、少なくとも3年ないし5年程度の職務経験を経た上で、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者かどうかの判断の対象となり得るものであることに留意することが必要である。」(企画裁量指針第3の2の(2))とされていますので、常時使用する労働者数の相当数以上の割合を対象労働者として企画業務型裁量労働制が導入されているということについては、裁量労働制の適正な運用が行われているかについて再検討の余地のあるものと考えられます。 |
7 みなし労働時間・・・8時間と9時間に2つのピーク 図表第6は、企画業務型裁量労働制において労使委員会の決議で定める時間、すなわち、「みなし労働時間」について、集計対象の480件の分布をとりまとめたものです。 これによると、みなし労働時間の平均は8時27分でした。また、みなし労働時間は7時間から11時間の間において分布しており、8時間として決議する届出が99件(20.6%)と最多で、8時間から9時間までの範囲で決議する届出が312件(65.0%)となっていました。 なお、みなし労働時間は、「1日についての対象労働者の労働時間数」として定める必要があり(企画裁量指針第3の3の(1))、1日以外の期間、例えば1箇月の労働時間として定めることはできないものです。 集計対象の480件中にみなし労働時間が11時間を超える届出がないことが、1日(または1週間・1箇月等の短期間)において、直ちに、過重労働による健康障害防止上の問題がないとの考え方ができるかもしれませんが、企画業務型裁量労働制の対象労働者に関しても「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成10年労働省告示第154号、以下「限度基準告示」という。)」の適用を受けますので、限度基準告示による限度時間が360時間となっている1年間等の長期間について、恒常的な長時間労働が行われないよう再検討の余地のあるものと考えられます。 |
8 有効期間・・・1年間が最多 図表第7は、集計対象の480件について、決議の有効期間(月数)の分布をとりまとめたものです。 これによると、有効期間を12箇月とする届出が214件(同44.6%)と最多となっており、続いて36箇月とするものが96件(20.0%)となっていますが、12箇月以内の有効期間を決議する届出が286件(59.6%)を占めていました。 |
9 届出状況 集計対象の480件のうち237件(49.4%)が、有効期間の開始(始期)に遅れて、所轄労働基準監督署に届出られていました(図表第8参照)。 企画業務型裁量労働制に関する決議は、所轄労働基準監督署長に届出を行わなければ法第38条の4第1項による企画業務型裁量労働制の決議で定められた時間労働したものとみなすという効力を発生しないもので、決議の有効期間に遅れて所轄労働基準監督署長への届出があったものは、その部分において無効であり、届出の日以後にのみ労働基準法上の効力が発生することとなります。 |