(参考資料3)

助言・指導の事例

〈解雇に関する事案〉
事案の概要(製造業)
 労働者は入社以来25年間地道に働いてきたが、定年を半年後に控えた ある日上司に呼びだされ、業績不振による整理解雇を通告された。
 仕事上で落ち度があった記憶もなく、特に退職しなければならないほど 業績が不振であるとは思えなかった。定年まで、職務を全うしたいとの思いも強く、解雇撤回を望み助言を申し出たもの。

助言・指導の内容
 事業主は、解雇理由を「業績が不振である」からとしたが、その具体的な根拠を示すことはできなかった。そこで、整理解雇を行うにあたっては、人員整理の必要性、解雇回避の努力、整理手続の必要性、整理対象者選定の合理性が充足しなければならない旨説明し、解雇撤回について再考を促した。

結 果
 会社は理解を示し、若干賃金が減少するものの定年まで在籍することで合意がなり、解雇は撤回された。

〈労働条件引き下げに関する事案〉
事案の概要(情報産業)
 労働者は入社して、間もなく10年になるが、1年前に主任から一般社員に降格となり、賃金も10%程減少した。しかし、職務内容や責任も主任時代となんら変わりなく、逆に仕事の量は増加していた。このような、人事権の行使は濫用にあたり無効であるとして助言・指導を求めたもの。

助言・指導の内容
 事業主は、本人の能力を考慮しての人事上の措置としての降格及び賃金の切り下げとの主張であったが、現に「賃金の減額を伴う降格は、労働契約の内容を変更するものであるから、労働者の承諾を得るか、就業規則に根拠がなければすることができない」との判例を示すとともに、人事権の行使は人事権の濫用にならないことが必要である旨助言した。

結 果
 結果として、元の地位に復職し、賃金も減額前に戻った。

〈いじめ・いやがらせに関する事案〉
事案の概要(小売業)
 労働者は、商品の品出し作業で、夜間勤務にあたっているが、動作に俊敏さが欠けることもあり、直属の上司から幾度となく、「お前のような奴は首だ」と叱責されている。精神的にも萎縮してしまい、会社に出勤する前向きな気持ちがなくなりつつあり、相談する相手もなく、助言指導を求めたもの。

助言・指導の内容
 事業主は、申出人の勤務態度が悪かったため業務改善等を目的とした注意、叱責であるとの説明があったが、申出人に対する言動が、人格権侵害と認められる場合も生じる旨を説明し、労働者が精神科に通院もしていることから、他の就業場所への異動も含めて検討するよう助言した。

結 果
 事業主は、労働者を他の就業場所へ異動させ、勤務継続することで円満解決した。




あっせんの事例

〈解雇に関する事案〉
事案の概要(サービス業)
 申請人である労働者は4月に入社して秘書の仕事をしていたが、半年後上司から呼び出され、会社の業績が悪く、1ヶ月後の解雇を通告された。配置転換による雇用継続を求めたが拒否された。他の労働者が解雇されていないのに自分が対象になったものであり、解雇理由に納得できず、「精神的苦痛及び経済的補償として慰謝料を求める」として、あっせんを申請したもの。

あっせんのポイント
 事業主は、解雇理由である業績の悪化について合理的な説明ができなかった。また、前任者の異動は認めたのに、申請人の配置転換を認めておらず、その理由も明らかなものが認められないことから、社会通念上理解されるものではない旨を指摘し、双方の歩み寄りを求めた。

結 果
 あっせんの結果、事業主は解決金として20万円を支払うことで合意した。

〈雇止めに関する事案〉
事案の概要(サービス業)
 1年契約の更新により7年間事務職の仕事をしてきたが、上司から突然呼   ばれ、契約は今年で打ち切ると言われた。打切りの理由は、「職場秩序保持のため」のこと。自分としては思い当たる理由もなく、上司に理由を質したが、口を濁しており、納得できないと申し出た。「契約の更新を求めたい。それが無理であれば、経済的・精神的損害に対する補償金として、慰謝料を求める」として、あっせんを申請したもの。

あっせんのポイント
 事業主は、契約更新はしない旨主張。あっせん委員から、期間満了に際して更新拒絶がなされる場合でも、過去に契約が反復更新されるなど一定の要件を満たす場合には、解雇権濫用が類推適用され雇い止めが無効になることがあるとの指摘がなされ、補償金の支払いについて検討するよう求めた。

結 果
 あっせんの結果、事業主が和解金として、給与1か月分の25万円を支払うことで合意した。

〈採用内定取り消しに関する事案〉
事案の概要(人材派遣業)
 労働者は会社の募集に応募し面接を受け、担当官から「よろしくお願いしたい。」と言われ、入社の予定を内容とする書類を提出した。そこで、他社への内定を全て断り待機していたところ、間もなく不採用(内定取消)の通知があった。こちらに落ち度が見られず、もはや後戻りできない状況であることから、会社に補償金を求めたが、拒否された。「経済的・精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを求める」として、あっせんを申請したもの。

あっせんのポイント
 会社によると、面接をした担当者は「前向きに検討する。」言ったに過ぎず、提出を求めた書面も採用を決定するような種類のものではないと申し立てたが、あっせん委員から、面接官が申請人に誤解を招くような言動があったと認められること及び内定取消の最高裁判例等を示して本事案の問題点を指摘したうえで、双方の歩み寄りを求めた。

結 果
 あっせんの結果、会社側も歩み寄りの姿勢を見せ、解決金として30万円を支払うことで合意した。



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